「えー?気に入らなかったの???」
ドクロ型はさすがにひどい、と言った瞬間、ぷっと膨れた。膨れたいのはこっちだと思うが、弁慶は冷静だった。対恋人用の微笑みと声でやんわりと言う。
「あのような形が作れるなんて、器用なんだなとは思いましたよ。さすがですね」
「うふ、すごいでしょ?」
「ええ、とても」
けど、とさらに息を多めにして耳元に吹き込む。
「・・・僕、ありがちなのも好きなんです」
「!!!」
ぴくっと反応した七桜はじーっと弁慶を見つめ、彼が微笑んでいるのを確認すると立ち上がった。背中に花を背負わんばかりにうきうきとキッチンに舞い戻る。
「ありがちなのもあるの。どうしようか迷ってね、用意したの」
「ふふ、準備がいいですね」
と、これは本音だった。どれだけ暇だったんだとかいうツッコミはいれなかったが、少しほっとした。まさか「バレンタインの本命チョコレートはドクロ型でした」なんて周りに言えやしないし、大体微妙すぎる。こっそりとため息をついていると、冷蔵庫の前で何やら格闘している七桜が目に入った。
「七桜・・・・・・???」
「よい、しょっと」
彼女はチョコレートを取りに行ったのではなかっただろうか。まるで重たいものを持つかのような声に弁慶もソファから立ち上がり、そばへと行く。七桜はふぅ、と肩で息をして冷蔵庫の中のものと格闘していた。
「何やってるんですか」
「チョコ、取ろうと思って・・・でもおっきすぎたかな」
へらっと笑う。その笑顔にひやりと背中にいやーな汗が伝う。
そして、冷蔵庫を見るなり凍りついた。朝食のときにはいろいろ詰まっていたはずの冷蔵庫にはものがたった1つしか入っていない。しかも仕切りという仕切りが取り外されている。
「よっこいしょっと。さ、弁慶」
立ち尽くす弁慶を脇に追いやって、七桜は巨大チョコレートケーキを取り出した。見た目は悪くない。ただ異常なまでに大きい。いや、これは異常だ。
「大きな愛を受け取って、なんちゃって☆」
「なんちゃってって・・・・・・」
冗談やめてください、と言いかけて大人の余裕でぐっと堪えた自分を誰か褒めてほしい。受け取った皿は両手にずっしりと重い。きらきらと感想を期待してる瞳に弁慶は半ば投げやり気味に微笑んだ。
「……愛に形なんて必要ないですよ」
「べんけー・・・!」
あからさまにきゅん☆という表情をしてくれて内心ほっとしたのは言うまでもない。
けれど、誰がこれを食べるんだという気持ちもあったりなかったりするわけで。
(勘弁してください、規格外もいいところじゃないですか)
ものすごく嬉しそうに飛びついてきた七桜を受け止めながら、気づかれないように盛大なため息をついた。
お題:Fortune Fate